母の日キャンペーン・啖呵売編

※『フーテンの寅』こと車寅次郎アニキに捧ぐ

青葉台駅前にて

テキ屋

「さぁさぁさぁ～、そこ行くお兄ぃさん、お姐ぇさん、寄ってらっしゃい、観てらっしゃい。

　ここに取りい出したるこのチケット！そんじょそこらのチケットとは訳が違うよ！

　なんと、このチケットを持って、ある店に行くってぇと、天にも昇る気分になれるってぇ代物だぁ。

　生きながらに極楽浄土の気分を味わえるってのは、世界広しと言えども、このチケットさまだけだぁ！

　と、こいつぁちょっと言い過ぎたかね。でもねっ、極楽浄土の気分ってのは嘘じゃぁねえんだよ。

　あたくしが身をもって体験してるんだから。

　いや～気ん持ちよかったねぇ～。オイラ見事に堕ちちゃいましたよ。涎で床を汚しちまって、店員さんに申し訳無かったね。

　実はね、タネを明かすとね、こいつぁ、そこの『こりとるん』っていう、リクライニング・サロンのね。

んっ？リクライニングちがう？リラクセーション・サロン？まぁ、どっちでもいいや、その、なんとかセーション・サロンのね、ギフト券なんですよ。

ついこのあいだ、オイラの舎弟がね。「アニキにはいつもお世話んなってるから」って、腰痛持ちのオイラに、手前ぇの少ねぇ稼ぎの中から「これで少しでも楽になってくだせぇ」って、くれたものなんですよ。

いや～オイラ感激しちまってねぇ。ほんのちょっと前までオイラの後ろを水っ洟たらしながらくっついてきていたガキんちょが、あんな立派な口きくようになったんだからねぇ。

いやっ、身内の話はこれっくらいにしてと。

だからねっ、こいつぁ正真正銘、ガセネタじゃぁないんです。あたくしも随分と長いこと、この商売をしています。正直言うと、ときにはガセを扱うこともあります。

でもねっ、今回は違うんです。

ねっ、だからほれっ、そこのお兄さん、ちょっと手にとってみてやって、みてやって。

もうすぐ母の日だねぇ。日頃、厄介かけてるお袋さんに1枚どうだいっ！

今なら、おまけに、そこの『青山フラワー』さんのカーネーション引換券も付けちゃうよ。

えっ？それでもだめっ？ちぇっ、しけてやんなぁ。

そんならもう一つおまけに、フット、ハンド、ヘッド、どれでも選べるプチサービス券も付けちゃうっ!!

ギフト券にカーネーション引換券にプチサービス券の3点セット。

これならどうだぁ！もうやけだ。

やけのやんぱち、日焼けのなすび、色が黒くて喰いつきたいが、あたしゃ入れ歯で歯がたたないよ、ときたもんだぁ!!」

画像1